■ph■nisis

すべて真実

Aphanisis

 わたしたちは、この表象代理を、わたしたちの疎外の原機序の図式のなかに位置づけることができます。わたしたちは、まずシニフィアンの最初の結合によって、主体はまず、第一番目のシニフ ィアンつまり一元的シニフィアンとして大文字の他者のなかに現われることを理解します。次に、第一番目のシニフィアンは、 もうひとつのシニフィアンに対して、主体を再現代理し、このもうひとつのシニフィアンは主体の消失aphanisisの効果を引き起こします。ここから主体の分裂が生じます。つまり、主体が意味としてどこかに出現する 一方で、主体はまた 、フィーディングつまり消減として自らを示すのです。すなわち、一元的シニフィアンと二元的シニフィアンとしての主体とのあいだには、主体が消減しているのですから、もしこういってよければ 、生と死の問題があるのです。表象代理、これは二元的シニフィアンのことです。

 

ラカン藤田博史精神分析学の四基本概念』

 

 

 

Disappearance of Desire

The literal meaning of this Greek term is disappearance. It was first introduced into psychoanalysis by Ernest Jones, who uses it to mean "the disappearance of sexual desire." For Jones, the fear of aphanisis exists in both sexes, giving rise to the castration complex in boys and to penis envy in girls.

「欲望の消失」

 原語のギリシア語においては「雲隠れ―消失」を意味する。この用語はアーネスト・ジョーンズによって精神分析学に挿入され、彼は「性的欲望の消失」を意味する語として使用した。ジョーンズによればアファニシスの作用は男女に共通してみられ、男児においては去勢不安として。女児においてはペニス羨望として発現する。

 

Disappearance of the Subject

Lacan takes up Jones's term, but modifies it substantially. For Lacan, aphanisis does not mean the disappearance of desire, but the disappearance of the subject. The aphanisis of the subject is the fading of the subject, the fundamental division -- or split -- of the subject which institutes the dialectic of desire.

「対象の消失」

 ラカンはジョーンズのこのタームを使用するが、大幅な変更を加えている。ラカンにとって、アファニシスは性的欲望の消​​失を意味するのではなく、対象の消失を意味する。主体の消失は主体の衰退、欲望の弁証法を定める主題の基本的な分離―あるいは分割―である。

 

NO SUBJECT an encylopedia of Lacanian psychoanalysis 「Aphanisis」https://nosubject.com/Aphanisis#google_vignette 私訳

 

 

 

 質問をもらった。ブログ名「Aphanisis」の意味はなんですか、と。

 上のとおりである。アファニシスフロイトの弟子であるジョーンズによって導入された語だが、ぼくはラカン的意味を採用している。

 ほかにも色々と含みはあるのだけれど、あまり自分の過去をこういう場所で披瀝することを好まない(臭い息を吐きたくない)ので、つぎのような答え方をする。

 このブログに綴られているものたちは、言ってみればぼく個人の記憶、経験、考えていたことなのだけれど、それはつまり、もう存在しないと言っていいぼくにまつわる話のことである。かっては存在していた存在。まさに消滅したことによって存在が示唆されるシニフィアン(字)の効果を、ラカンは「Aphanisis」と言っている。過去を綴るブログをやるうえで、これほど適する語が自分のなかにない、というだけのはなしである。

 だから、図でいうなら斜線を引かれたS(主体 Sujet)への接近の試みといってもいい。 そもそも、ひとって誰しも、語るたびになにかを失っているような感覚にはならないものだろうか。ぼくはわりと没落感をそこはかとなく感じてるんだけども。 ちなみに、

 

The etymology of the term refers to it as the absence of brilliance in the astronomical sense such as the fading or the disappearance of a star.

Wikipedia「Aphanisis」 https://en.wikipedia.org/wiki/Aphanisis

 

 

というか、質問してくれたきみは、ぼくがここで言っていないほかの意味も、ちゃあんと知っているじゃあないですか。 しかし、見方によれば、誰かとの記憶の恢復は「水子供養」と言ってもいいかもね。